様々な経営者と出会い、話をしていると面白いことに気が付きます。
ほとんどの経営者がポジティブ思考ということです。
これは、ビジネスを発展させるために非常に有効なエネギーとなり得ますので、企業の成長には欠かせないとても大切な感情の一つです。
しかし、一方でポジティブ「だけ」が素晴らしいと思い込んでいる経営者も少なくありません。
これは、とても危険な思考だと考えています。
なぜなら、組織の中からネガティブな思考を排除しようとする傾向にあるからです。
これを聞いて、「ネガティブな思考を排除して何がいけないのか?」「大事なのは、ポジティブ思考だろ」と強く疑問に思った方は、特に要注意です。
突然ですが、野球ではピッチャーとキャッチャーのペアのことを「バッテリー」と呼びます。
バッテリーというと、他に、エンジンや電池などに付いているエネルギー体のこともバッテリーと呼びますね。
つまり、プラス極とマイナス極があるペアのことをバッテリーと呼びます。
では、なぜ野球ではピッチャーとキャッチャーのペアのことをバッテリーと呼ぶのか。
それは、その関係性の間柄にプラス極とマイナス極が生まれているからなのです。
つまり、ピッチャーがプラス極でキャッチャーがマイナス極なのです。
たとえば、ピッチャーは『絶対に打たれるもんか!』と常にポジティブ思考でいます。
一方、キャッチャーは『打たれたらどういう動きをしよう』と考え、
常に最悪のケースを想定してネガティブ思考になります。
では、果たしてそこに良し悪しはあるのでしょうか?
組織においては、それぞれが自分の役割として、ポジティブになったり、ネガティブになったりする必要があります。
それはつまり、彼らが生まれ持った性格ではなく、チームのバランスを保つための役割でしかありません。
仮にピッチャーが『打たれたらどうしよう』とネガティブだったらどうでしょうか。
そのときは、キャッチャーが励まし役、つまり、ポジティブになるはずです。『お前なら絶対に打たれない』と勇気づけるはずです。
逆でも然りです。キャッチャーが「そんなのは、打たれた時に考えれば良い」と無駄にポジティブ思考を発揮した場合、チームがぐちゃぐちゃになるのは誰でも想定がつきます。
つまり、誰かがポジティブになればなるほど、誰かが同じだけネガティブになるということです。
そこに、善も悪もありません。
そして、『ポジティブは良い』『ネガティブは悪い』というレッテルを貼り、私たちが勝手に都合よく解釈をしているに過ぎません。
誰かがポジティブになれば、誰かがネガティブになる。
リーダーである私たちは、この力学を理解する必要があります。
そして、私はこの力学を「バッテリー理論」と名付けました。
残念ながら、自己啓発などによる影響なのか、「リーダーはポジティブでいることこそが正しい」と勘違いしている人が非常に多いために、チームが豊かに育まれないケースが非常に多いです。
光が当たれば影ができるように、あなたがポジティブでいられるのは、身近な誰かがネガティブになってくれているからです。
その当たり前の存在のありがたみを、リーダーである私たちは絶対に忘れてはいけません。