申し送りとは、交代勤務が行われる介護や医療の現場等にて用いられ、業務を円滑に進めるために前任者が行った業務内容や連絡事項・注意事項を後任者に伝えることを意味します。
似た意味合いで使われる「引き継ぎ」は前任者が職場を離れ、後任者へ完全にバトンタッチするケースで使用されます。
1.申し送りとは
仕事を行う上で欠かせないものの一つに「申し送り」があります。
特にチームで仕事を行っている場合には、次の担当者へ必要事項を文字通り「申し送る」必要があります。
これは業務における「情報共有のひとつ」と言えるでしょう。
どんな職場であっても、大なり小なり(そしてやり方は様々だとは思いますが)行われているのはないでしょうか。
引き継ぎとは
ところで、「申し送り」とあわせて「引き継ぎ」という言葉もよく聞かれます。この2つはどう違うのでしょうか。
「業務内容についての必要事項を伝える」という点において違いはあまりありませんが、引き継ぎとは「前任者が後任者に伝え、仕事自体は前任者の手から離れる」ことを指しています。
基本的には前任者の異動や退職といった理由があるため、その業務は後任者に完全に引き継がれることになります。
こちらは様々な場面で行われており、多くの人はどこかで経験したことがあるのではないでしょうか。
申し送りとは
一方、申し送りとは「前任者が行った業務内容や連絡事項、注意事項などを後任者に伝え、業務を円滑に進める」ことが目的となります。
特に介護や医療の業界においては重要であり、よく使われる言葉になります。
介護や看護といった医療業界では、24時間365日、常に現場が動いているため、チームでシフトを組んで業務にあたっています。そのため、前任者から後任者への申し送りがとても重要になってきます。
サポートに欠かせない「情報を共有し、利用者さんや患者さんのケアを円滑に行う」ことが目的です。
申し送りを行う意味もここにあります。
またこれによって事故を回避したり、ミスを減らすことにも繋げることができます。
2.介護現場における申し送りの重要性
介護の現場において、「申し送り」は重要事項に位置付けられています。
利用者さん、そしてそのご家族にとっては、適切な介護サービスを受けることはとても大事なことですが、申し送りの情報の中にそのポイントがたくさん詰まっているからです。
服薬の変更など医師からの指示、そして容態の変化など、命にかかわってくるような大事な情報があったり、また事故を防ぐという点でも介護業界における申し送りは大変重要なポイントです。
チーム全体でサービスを提供
そして介護に関わるスタッフは1人で利用者さんのすべてを見ることはできません。チーム全員で利用者さんとその家族に関わっています。
利用者さんお1人に対しては、職域や職種も様々なスタッフが関わっていることでしょう。
介護福祉士、介護士、理学療法士、作業療法士、支援相談員、管理栄養士、そして看護師、医師など。
それぞれの立場や役割を踏まえ、利用者さんに適切なサービスを提供しています。
ひと 対 ひと の関わり
介護の現場では「ひと 対 ひと」の関わりである、という認識がとても大切になってきます。
状況が同じでも、対象となる利用者さんによって「やれること」「やること」も変わってきますし、ご本人の捉え方なども変わってくることがあるでしょう。
ここで大切なのは、「提供する具体的なこと」が異なっていたとしても、担当者によってサービスの質が変わるのは好ましくないという共通の認識です。
そこで、チームスタッフで情報を共有し、業務を適切に行い、サービスの質を担保することが重要となってきます。
これが「申し送り」における目的の一つとなってきます。
(その他にも介護計画の立案や見直しのためにも活かすことができます)
自分たちのチームにおける目的を再認識する
また、それ以外にもチームごとに「私たちはこれが目的だと考えている」ということがあると思います。さらに、より現場に則した具体的な目的を持っていらっしゃるチームもあると思います。
改めて、「申し送り」の目的とは?ということをチーム全員で再度認識しなおすということも、とても有効だと思います。
既に「わかっている」と思っていることであっても、改めて確認することで意識をすり合わせることができ、言語化することで明確になり、次の行動の指針となるからです。
難しい場合は、少人数から
一方で、シフトも様々、勤務時間も様々、業務そのものも異なる。ましてや全員が一堂に集まることもまれ、いう中で「申し送りの目的」を再確認することは、時間的にも物理的にも難しいということもあるかと思います。
そのような場合には、ひとまず話し合える人たちから共通の認識を再確認し、徐々にチームに広げていくというのも一つの手段だと思います。
業務の効率化へ繋げることができる
先に挙げた「情報を共有」するこということは、チーム全体で適切な業務を行うために必要であり、さらにはサービスの質を担保することに繋がるとお話しました。
様々な情報を共有することで、Aさんがしていた方法をチーム全体でやってみようとか、大切な考え方だからみんなで取り組もうなど。業務の効率化につながるヒントも多数あることと思います。
このような取り組みを続けていくことで、最終的にはチームスタッフの業務に関わる負担を減らし、業務を効率よく進めることにも繋がっていきます。
3.介護現場での「申し送り」の現状
介護現場ではシフトを組んで、各々の業務にあたっています。
そのため多くの事項を自分以外のスタッフに申し伝えなければならない必要があります。
介護記録と申し送り
また、介護記録の作成もあり、「どこに何をどのように書くか」「何を申し送りとして伝えるか」など、スタッフが認識し、必要であれば解決しておかなければならない事柄は数多く存在していることでしょう。
さらには、申し送りを連絡帳として使っているという現場もあれば、介護記録の補完として使っている現場もあるかもしれません。
よく聞かれる声としては、
「何をどこまで伝えたらいいのかわからない」
「伝えようと思っていたことを忘れてしまう」
「申し送りノートをじっくりと読む時間がない」
「書く時間がない」
「形骸化してしまっている」
「書いてあることはできるが、それ以上のことにまで気が回らない」
などがあります。
現状を認識しなおすことで業務の効率化を図る
そこで、自分たちの介護現場での申し送りについて
- 現状の申し送り方法
- 問題点
- 改善すべき点(あれば)
を再度洗い出し、不要なものは省き業務を効率よく進められるように考えてみると、今後の業務を効率よく進められるようになるでしょう。
とはいえ、自分たちでそんな時間を取ることは難しいというのも現状だと思われます。
そこでこの記事では、改めて「申し送り」について考えていただくことで、少しでもスムーズに行えるヒントを掴んでいただけたら、と思っています。
4.申し送りの方法について
では、実際の申し送りはどのような方法で行われているでしょうか。
現場によって方法は様々だとは思いますが、主に以下のやり方で行われていることと思います。
①口頭で申し送り事項を伝え、確認し合う
②申し送りノートに記入し、各々がそれを読んで対応する
③情報機器等を用い、ICTを利用して伝え合う
それぞれの内容や、考えられるメリット・デメリットは以下のようになります。
①口頭で伝える
全スタッフが集まり、口頭で申し送り事項を確認します。
【メリット】
・その場にいる全員が確実に申し送り事項について確認できる
・伝え手にとって、書く手間が省ける
・疑問点はその場で確認できる
・文章だけでなく話して伝えるため雰囲気も掴みやすい(言外の雰囲気を掴みやすい)
【デメリット】
・全員が集まるタイミングが取りづらい
・人によっては、何を伝えたらいいかわからない場合がある
・各自が必要事項についてメモを取らなければならない
・申し送り事項を予めまとめておかないと、時間が過ぎてしまう
・予め現場でメモ等を取るなどしておかないと、伝える内容を忘れてしまうことがある
介護現場ではシフト時間が細かに異なっていたりするため、対象である全員がその場にいることは難しいかもしれません。
②ノートを使う
申し送り用のノートを共有して伝達事項を書き込み、確認し合う方法です。
【メリット】
・自分のタイミングで書くことができる
・各自のタイミングで確認することができる
・情報がノートに残るので、必要事項をメモしたり、後で再度確認することができる
・情報が集約できる
【デメリット】
・申し送りのフォーマットがないと、何を書いていいかわからないという場合もある
・質問事項があった場合、その場で確認しづらい(タイムロスがある)
・ノートを書くにも確認する(読む)にも、人が集中する時間帯だとノート渋滞が起こる
・書くという行為によって、時間がかかったり、負担が大きい場合がある
・その場ですぐ記録できないことも多く、メモを残しておく必要がある
こちらが現状では多くの介護現場で行われている方法ではないでしょうか。
申し送りノートは基本的に詰所や控室などに置いてある場合が多いかと思います。記録する場所は限られている一方で、記録したいことが発生する場所や時間は多岐に渡ります。
その結果、「書く」にも「読む(申し送り事項を確認する)」にも「ノート渋滞」が起こるという話をよく聞きます。
申し送りノートを読むのは勤務に入る前だったり、勤務に入った際が最も多いタイミングだと思いますが、そこでノートを読むための待ち時間があったりすることで、スムーズに実際の業務をスタートできないこともあるのではないでしょうか。
一方で、申し送り事項のフォーマットを予めチームで決めておくことで、
「どう書いたらいいかわからない」
「何を書いていいかわからない」
といったことに対応することもできます。
ノートに書くということは、情報が確実にそこに残るため、後で見返す必要が出てきた際にも役立つ場合があります。
③情報共有システムを使う
情報を共有できるシステムを施設に導入し、各々の端末から情報にアクセスする方法です。
【メリット】
・使用に際して、場所や時間を問わない
・後で必要事項や探したい情報が探しやすい
・複数人が同時に情報にアクセスすることができる
【デメリット】
・端末機器に慣れる必要がある
・情報漏洩などが考えられる(対策を考える必要がある)
・スタッフへの教育が必要
・機械の破損があった場合の対応が必要
昨今、介護業界においてICT(Information and Communication Technology)化が進められています。
この中にはチャット機能を備えている場合もあり、これを活用することで申し送りをスムーズに行っている事業所も徐々に増えてきています。
このように情報を共有するシステムを導入することにより、業務の軽減化やコミュニケーションの活性化に繋げることができ、またデータを分析することで業務の効率化が望めます。
一方で、機器に不慣れなスタッフへの教育や、情報の取扱いについては事業所全体で取り組んでいく課題となります。
申し送りを行う目的を再確認する
今回挙げたどの方法も、良い面や問題となってしまう面があります。
またこれまで事業所でやっていた方法に慣れているという点もあるでしょう。
その反面、「○○だったらいいのに」「ここをもっと改善したい」という意見がある場合は、どのやり方だとスタッフ、利用者さん双方にとってベターであるか考えてみるのも必要なのかもしれません。
そこで、そもそも論になってはしまいますが、「申し送り」を行う真の目的について意識することも大切かと思います。
具体的なところでは、例として以下のようなことが挙げられます。
- 服薬方法の変更内容を伝える
- 新しく症状が出た利用者さんの症状を共有し、注意を促す
また、申し送り本来の目的としては、次のようなものがあると思われます。
- 時間内に行えなかった作業を次のスタッフへ引き継ぐ
- ご家族への事故状況報告を翌朝のスタッフへ依頼する
- 職場環境の改善提案を行う
このような本質を常に頭に置きつつ、よりよい環境を整えることが必要となってきます。
5.申し送りのポイント
では、実際に申し送りを行う際のコツや、気を付けておくといいポイントについてお話します。
既にこれまでに様々な場所で言われていることが多いと思いますが、それだけポイントは絞られているとも言えます。
再度一緒に確認していきましょう。
5W1Hを意識する
5W1Hは、情報を伝えるために必要なポイントのことで、物事を伝える際の基本になります。
介護の現場での申し送りにはもちろん、介護記録作成時にも重要となってきます。こちらを意識するだけで「自分以外の人に伝える」ポイントが自然と絞られてくるので、簡潔に伝えられるようにもなります。
When(いつ) | 日時など |
Who(だれが) | 利用者さん、ご家族、医療スタッフ、介護スタッフ、自分など |
Where(どこで) | 物事が発生した場所 |
What(何を) | 状況やその内容 |
Why(なぜ) | 理由(この場合、事実であるか推測であるか明確に分けましょう) |
How(どのように) | 具体的な内容 |
また、最近はもう一つ「H」が加わった、「5W2H」という考え方もあります。もう一つの「H」はこちらです。
How much(どのくらい) | 状況の程度 |
5W1H(または、5W2H)の項目は全てが必須でない場合もあります。チーム内で既に共通している事柄などは特に伝える必要がなかったりもするので、その辺りは簡潔に伝えることを目安に適宜工夫していくといいと思います。
ただ、何をどう伝えたらいいかわからない場合には、この項目に立ちもどって考えることで、自然と伝わる内容となってくることでしょう。
メモを取る
後で漏れがないように、伝達事項が発生した場合にはメモを取っておきます。実際にそんな時間がない場合もあるかと思いますので、後で思い出せるようなキーワードだけでも記録しておくと後々思い出しやすくなります。
事実と意見を分けて伝える
伝達事項をわかりやすく伝えようとすると、時に冗長な表現になってしまうことがあります。この際注意したいのが、「事実」と「意見(または推測)」を分けて伝えることです。
自分の考えや推測が今後の介護ケアに重要な場合もよくあります。
しかし、まずは客観的な情報の伝達が目的であることを念頭に置いて、事実と意見(または推測)はきっちりと分けて伝えるようにしましょう。
誰に何をしてもらうのかを明確にする
情報の伝達、共有が申し送りの目的ですが、この際には「誰に何をしてもらうのか」を明確に伝えることが大切になってきます。
例えば「服薬量の変更がありました」と書いてあったとして、それを「知ってもらえばいいのか」「変更したことを申し送りの後に利用者さん、ご家族に伝えることも必要なのか」などなど、その後の行動までを伝えておく必要が発生する場合もあります。
その際「誰に」「何をしてもらう(もしくはする必要はないのか)」を意識することで、業務がスムーズに進みます。
重要度も伝える
申し送りの際には、重要度も必要になってきます。
伝達者は重要だと位置付けていても、受け取り手がよくわかっていなかったというケースもままあります。
「きっとわかるだろう」ではなく、「わからないかもしれない」といった意識を持ち、重要な場合はその旨も伝えるように心がけましょう。
また、申し送りの際には、その意味合いが言外に含まれていることがよくあります。
その内容は、「注意」「連絡」「要望」「確認」「相談」など、どれに該当するのかを意識しながら伝えることで、申し送りがよりスムーズに進むでしょう。
(上記内容分類については、以下の資料を参考にさせていただきました)
(参考)
「介護施設におけるスタッフ間連携のための情報共有システムの社会実装に関する研究」筑波大学システム情報工学研究科 中島正人(2015年3月) p88 表5.1.1より
また、チーム内で申し送り事項の分類を予め決めておいて、そういったハンコやスタンプを押すことでより内容が端的に伝わりやすくなることも考えられます。
特に重要な事項については「重要」という分類もあるといいかもしれませんね。
申し送りを活用することで得られるメリット
申し送りを行う目的については、「1.申し送りとは」でお話しましたが、スムーズに行い活用することで以下のようなメリットが考えられます。
・コミュニケーションが促進される
申し送りを行い、情報を共有し介護ケアをスムーズに進めることで、スタッフ間、または利用者さんとスタッフの間などのコミュニケーションが促進されることが考えられます。
・サービス向上に繋がる
申し送り事項で気づいた点や改善事項に取り組みやすくなることで、よりよいサービスを提供できるようになります。
・スタッフそれぞれの活かすべき特性が明確になる
主にリーダーの方の視点になるかと思いますが、各スタッフは何が得意で、どんな特性を持っているかがわかりやすくなります。
・コミュニケーションが円滑になる
チーム内のコミュニケーションの土台を築くことからスタートする方法もありますが、申し送りをスムーズに行った結果「何を考えているのかわかりやすくなった」ということが実感できるようになる可能性があります。
6.ICTを利用した申し送り
最後に申し送りについて、近年介護現場に導入されることが増えている「ICT」を利用したケースについてお伝えします。
ICTとは
ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、「情報通信技術」と訳されます。
これまで手作業やアナログの業務が多かった介護現場に、このシステムを導入し業務の効率化を図ろう、という流れが大きくなっています。
これまで手作業で行っていた部分をシステムを使って効率を図るだけでなく、「Communication」という単語が入っていることからも、介護現場におけるコミュニケーションの活性化が期待できます。
これは各々がタブレット等の端末を持つことで、これまでに比べてリアルタイムで情報を共有できたり、様々なデータ(スタッフ間でサンクスカードを送り合ったり、趣味などの繋がりといったデータ)も活用することができるからです。
次にICTを利用した「申し送り」について、簡単にメリットとデメリットをそれぞれ挙げておきます。
ICTを導入するメリット・デメリット
【メリット】
・複数人が同時に入力できる
・事務作業における時間が軽減できるため、ケアのための時間を増やすことができる
・気づいたときに入力しやすい(漏れが少ない)
・情報、文字が読みやすい
・ほしい情報が探しやすい
・入力、確認ともに場所時間を選ばない
・データ解析、分析がしやすい
【デメリット】
・機器の取り扱いに注意が必要となる
・ITリテラシーを始めとした教育が必要となる
・導入に関し費用がかかる
・慣れるまでの負担感がある
・情報漏洩などの管理を周知知る必要がある
・誰でもすぐに使えない場合がある(使い方の勉強が必要となる)
この中で情報漏洩については、ノートを使った方法であってもその可能性はありますし、事業所外では使用できない設定にしたりと、対策は可能です。
また、スタッフへの教育が必要であったり、これまでのやり方からの変更ということで、反発も少なからずあるかと思いますが、人材不足や介護サービスの向上のために一度考えてみる価値はあります。
介護に特化したチームICT「ケアズ・コネクト」
業界初の介護に特化したチームICTである「ケアズ・コネクト」
様々な介護事業所様から「ICTでこの様なことができたら…」という要望・意見を取り入れて開発したICTであるため、介護現場で使いやすく活かしやすい仕様となっています。
「申し送り」については、ケアズ・コネクトに搭載している5つの機能パックのうち、
基本機能の中にある「チャット機能」を用いることで、気軽にかつ確実に情報を伝達し、共有することができます。
こちらの「チャット機能」で、特筆すべき点は『要確認』というボタンがあること。
特に確認が必要な項目について、「要確認」にしておけば、受け手が確認したかが一目でわかります。
さらに、未確認事項だけをまとめて見られるページもあるため、確認漏れを防ぐことができます。
今後、益々需要が増えていく介護業界において、人材の確保や職場環境の改善は必須課題となります。
その中で、介護サービスの質を担保・向上を図り、利用者さん、ご家族、そしてそこで働くスタッフの皆さんが少しでも心地よく過ごせるためにこういったICT化も一つの手段として考えてみてはいかがでしょう。