企業が採用活動をする際に、あれやこれやと工夫をして、いかに求職者の目に留まるかを必死になって考えます。
採用活動は、企業においての命とも言えますので、何よりも真剣に取り組まなければなりません。
そんな中で、求人広告などでよく目にする文言があります。
それは、「家族のように仲良し」だとか「アットホームな環境」のような文言です。
結論から言うと、私なら絶対にこの表現は使いません。
医療介護業界だけでなく、人口減少傾向にある我が国ではどの業種業界でも人手不足が顕著になり、企業にも個人にも生産性の高い仕事が求められています。
そんな最中、人手不足がゆえに残業が日常的になってしまっている法人も少なくないことでしょう。しかも、私たちが相手にしているのは生身の人間なので、イレギュラーなことも多いと思います。
しかし、こうした現実があるからこそチーム力を育み、課題解決に向けて取り組む必要性があるにもかかわらず、『家族のように仲良し』や『アットホームな環境』などという表現を使うと、それをネガティブに捉える人も出てきます。
たとえば、みんなが残業している状況があるとします。
すると、「仲間だからこそ、家族だからこそ私も残業しなければいけない」……と捉えてしまう人が出てきます。
もちろん、大変なときや忙しいときには、助け合うことはとても大切なことです。
しかし、日常的に残業が多い法人というのは、無意識下で残業を強制してしまうことに繋がります。
少し思い出してみてください。
たとえば、あなたが定時で帰ろうとしても、仲間や上司が残っていたら、無駄に気を遣って残業したことはないでしょうか?特に、上司が残っているだけで、先に帰ることすら気が引けるなんてことはないでしょうか?
『家族のように仲良し』や『アットホームな環境』でみんな仲良しだからこそ、無駄に気遣いをさせて、残業を助長する心理戦がはじまってしまいます。
これは、上司では気づかない深層心理の部分ですね。上司は、残業を助長させている気すらさらさら無いでしょう。しかし、実際にこのような心理状態になったことがある人も少なくないのではないでしょうか?
さらに、残念なことにそういう法人に限って、「残業している人ほど頑張っている」という評価になったりしてります。また、逆説的に言うならば、定時で帰ろうものなら、「あの人は、定時で帰るんだ」という目で見られてしまうと言うことです。
つまり、「家族のように仲良し」だとか「アットホームな環境」などの表現を使うことで、アットホームな環境に合う人は良いですが、組織風土に合わない人が容赦無く弾き出されてしまう環境を作ることになります。
また、『アットホーム』や『みんな仲良し』といった表現に惹かれて応募してくる人というのは、得てして、家庭に問題を抱えている人が少なくありません。
たとえば、『家族のように、みんな仲良し』と謳った場合、家族関係がうまくいっていない心の寂しさを職場に投影する人が応募してきます。
寂しさを埋めるために、職場に自分の居場所を見出そうとするのです。
仕事を楽しむこと自体は素晴らしいことですが、一方で、寂しさを埋めるという目的のために仕事という手段で自分の人生を歩もうとします。
つまり、自分を癒すことを第一優先で仕事をしてしまうことになるのです。
もちろん、介護という仕事に応募するくらいなので、高齢者が好きだったり介護の仕事をしたかったりという気持ちは本当でしょう。
しかし、本質的には、自分の心の寂しさを埋めることにフォーカスしています。
果たして、身近にいる家族やパートナーとうまく関係を育めていない人が、赤の他人であるスタッフ同士や高齢者と信頼関係を結べるでしょうか?
逆に言えば、身近な人としっかりと関係を育めている人は、介護や医療の現場でも、愛情を持って利用者や仲間たちに接することができます。
とくに親子関係や夫婦関係がうまくいっていると、心から愛情を持って他者と関わることができる傾向にあります。なぜなら、自分はまわりから必要とされているという安心感がライフワークの土台にあるからです。
この安心感があると、愛情いっぱいに、私生活も仕事も充実した人生を歩むことができます。
このように、採用戦略を整えることは簡単ではありません。
でも、だからこそ、とてもやりがいがあります。
ただ、最初からうまくいくことを期待してはいけません。試行錯誤しながら、自分たちなりの採用方法を見つけることが大切です。
そのためのヒントとして、採用活動をする際に応募者に向けた必要なメッセージを簡単にまとめましたので、参考にしてみてください。
1 募集選考のプロセス
2 契約ステータスの選択
3 就業場所の選択
4 労働時間の選択
5 評価・表彰・賃金制度
6 業務環境
7 教育研修体制
8 組織風土